からだの病いとこころの痛み
苦しみをめぐる精神分析的アプローチ
著者|村井 雅美
寄稿|東中園聡・松木邦裕
¥3,960
- ISBN|978-4-909862-06-8
- 初版発行|2019年10月25日
- 造本|A5判上製/ヨコ組み
- ページ数|248
- 重さ|420
- 心理
- 精神分析/医療領域
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病気に「見舞われる」状況で「大切な他者」とのあいだに起きている“こころの動き”
病気という体の故障は医療で改善できても、もつれてしまった不幸は、人と人の出会いのなか“こころが通う”感覚でしか、暖かく受け留められることはないのかもしれません。
内容紹介
私たちは人と出会うなか、いつしか“こころが通っている”感覚に包まれていることがあります。
「いつも微かに」あるいは「この瞬間とてつもなく」……
それは、相手に同調できて寄り添えたからでしょうか?
自分を思いやって手を差し伸べてくれたからでしょうか?
じつは“こころが通った”という感覚は、そうした応報のなかにではなく、「自分のなかに相手のこころが贈り物のように宿って、その包みの紐をそっと解いて、相手を暖かく見つめ返す」、そんな響きあいの場面にこそあるのではないでしょうか。
○ 本書では、こうした “内面の響きあい”を見つめて、人の《苦しみ》にアプローチします。
それも、人間が避けてとおれない「病気に見舞われる」状況で「大切な他者」とのあいだに起きている“こころの動き”に、眼差を据えます。
○ 病気という体の故障は医療で改善できても、もつれてしまった不幸は、人と人の出会いのなか“こころが通う”感覚でしか、暖かく受け留められることはないのかもしれません。
著者・出版社からの一言
本書は心理臨床の専門書として上梓されますが、
そのエッセンスをさらに抽出し、とくに後半での四例を人間ドキュメンタリーとして描いた書籍が、
本書と同時に刊行されます。
『もの想うこころ ―― 生きづらさと共感 四つの物語』〔木立の文庫, 2019年〕
本書の【四つの出会い】に違った方向から光をあてることで、
新たな気づきが生まれ、「こころのつながり」の味わいが深まることを期した試みです。
※
そうしたことから本書の後半【四つの出会い】では、本文版面の傍らに〈参照註〉として、
そこでの記述が “同胞の書『もの想うこころ』ではどのように描かれているか” の一端が、案内されています。
著者紹介
村井雅美(ムライ マサミ)
1993年、米国ニューハンプシャー大学大学院心理学部博士課程中途退学。
2018年、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程(臨床実践指導学講座)単位取得退学。博士(教育学)。
臨床心理士。
日本精神分析学会認定心理療法士スーパーバイザー。
著書に『もの想うこころ――生きづらさと共感 四つの物語』〔木立の文庫, 2019年〕がある。
ほかに『対象の影――対象関係論の最前線』共訳〔館直彦監訳:岩崎学術出版社, 2009年〕、
『フロイト――視野の暗点』共訳〔後藤基規・弘田洋二監訳: 里文出版, 2007年〕、
『被虐待児の精神分析的心理療法』共訳〔平井正三・鵜飼奈津子・西村富士子監訳: 金剛出版, 2006年〕、
『精神分析という経験――事物のミステリー』共訳〔館直彦・横井公一監訳: 岩崎学術出版社, 2004年〕、
『パニック障害の心理的治療法――理論と実践』共著〔佐藤啓二・高橋徹編著: ブレーン出版, 1996年〕など。
もくじ
刊行に宛てて(東中園 聡)
まえがき
introduction 現代社会で見失われたもの
三つの視点
関係とは? 相互性とは?
CHAPTER 1 臨床の知
その人らしく生きていくために
三つの視点そして
精神分析のまなざし
生きていくために欠かせないもの
CHAPTER 2 病むということ
病むこと 生きること
子どものこころ 大人のこころ
つらいこと 再演の場
内なる対話 ともに
CHAPTER 3 病むことへの関わり
周産期・乳幼児期の病い
周産期・乳幼児医療とこころ
新たな視点の導入
四つの出会い
病むこととは? 生きることとは?
CHAPTER 1 阻まれた「つながり」そして孤独
名づけられなかった声
心象の住み家
CHAPTER 2 分断された「つながり」そして怯え
絶たれてしまった声
透明な壁で分かたれて
CHAPTER 3 傷つきと「つながり」のほころび
出てこない声
母親のナルシシズム
CHAPTER 4 病いと「つながり」の解体
乱れてしまった声
母親のまなざしに宿る病い
conclusion 身体の傷とこころの臨床
文 献
雪-寄草―幸福の追求、あるいは不幸(松木邦裕)
あとがき
図書設計・デザイン
中島佳那子
装画・イラスト
中島佳那子(装画イラスト)
デザインの特徴
若草色の紙にスミ1色の印刷と「白箔」で、
専門書でありながらお洒落なテイストを演出しました。
本書で論じられる「四つの物語」が、「四つのエンブレム」で表現されています。