精神病というこころと出会う

ローゼンフェルド臨床の現在性

著者|R. ヒンシェルウッド

¥4,400

  • ISBN|978-4-909862-44-0
  • 初版発行|2025年08月17日
  • 著者|訳者|村井雅美
  • 造本|A5変型(スリム)判上製
  • ページ数|288
  • 重さ|380
  • 心理
  • 精神分析/精神療法

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精神病というこころと出会う

病いは“ゆがみ”なのか? 
人としての“いたみ”なのか?

精神病という
“こころの状態”に
「赤ん坊の泣き声」を聴き 
その苦悩をみずからの内に「宿す」
――けっして見捨てない“こころの臨床”

内容紹介

相手を(自分を)愛する/憎むことは私たち誰もが抱く感情です。そして「愛憎半ば」と云うように、 愛と憎しみが混同される体験も何ら特異なことではないでしょう。そうしたなか自己-愛が自己-憎悪と混淆してしまった状況、それが精神病状態というこころの混乱――本書では、統合失調症はじめ「分からない」とされてきた重い病いを、理解の及ばない“ゆがみ”として諦めず、自らの内に宿し《苦悩の声》に耳を澄ますスタンスを学びます。ローゼンフェルドの“いたみ”を「分かちあう」臨床を、いまに活かす挑戦です。

訳者のいざない

私には、「あの人とはどのように出会えば良かったのだろうか?」と考えさせられる記憶が、いくつもあります。

―――まったく身なりなど気にせず、季節にそぐわない衣類を身につけ、何日もシャワーを浴びず、時に土を手で掴み、食べたりしていた女性。
――いつも決まったように、何も映っていないテレビの前の椅子に座り、ひとり黙って画面を凝視していたが、ある日突然、橋から立ったまま飛び降りて、両足を骨折してしまった若い男性。

彼ら彼女らにどう出会い、言葉を交わせばよかったのでしょう。
「相互作用の片方の人間であるわたしは、どうすればよかったのか?」――その後、時を経て転移や投影同一化といった精神分析の視点を手に入れてからも、そういった問いが、いつも私のこころのなかに燻くすぶり続けています。

ローゼンフェルドの著作には、こうした“精神病というこころ”と出会い交流することの本質が、ヴィヴィッドに描き出されています。

松木邦裕氏のいざない

ローゼンフェルドは“精神病”や重い病理の精神分析を実践し、そこからの学びを残しました。けれども残念なことに、それを体系的に紹介する著作はこれまで世に出ていません。皆さんがこれから読まれる本書は、初めて書かれた入門書です。

精神分析臨床家の村井雅美氏によって翻訳され、“ローゼンフェルド臨床”を追試してきた東中園聡氏の【抄読】〔巻末の解題随想〕が加わったことで、本書は、ただの入門書ではなくなり、ローゼンフェルド臨床を“実感”していく書に変わりました。

著者紹介

【著者】
ヒンシェルウッド(Robert Hinshelwood)
イギリスの精神科医で大学教員。エセックス大学名誉教授。1984年にBritish Journal of Psychotherapyを創刊し、十年間、編集に従事。1999年にJournal Psychoanalysis and Historyも立ち上げた。“A Dictionary of Kleinian Thought”(1989)の著者。

【訳者】
村井 雅美(むらい まさみ)
米国ニューハンプシャー大学大学院心理学部博士課程中途退学。
京都大学大学院教育学研究科博士後期課程(臨床実践指導学講座)単位取得退学。博士(教育学)。
臨床心理士。公認心理師。日本精神分析学会認定心理療法士スーパーバイザー。医療法人 岡クリニック、大阪公立大学に勤務。

著書に『からだの病いとこころの痛み――苦しみをめぐる精神分析的アプローチ』、『もの想うこころ――生きづらさと共感 四つの物語』〔木立の文庫, 2019年〕。
共著書に『精神分析臨床での失敗から学ぶ』松木邦裕・日下紀子・根本眞弓編〔金剛出版, 2021年〕、『パニック障害の心理的治療法』佐藤啓二・高橋徹編著〔ブレーン出版, 1996年〕が、共訳書には『対象の影』館直彦監訳〔岩崎学術出版社, 2009年〕、『フロイト』後藤基規・弘田洋二監訳〔里文出版, 2007年〕、『被虐待児の精神分析的心理療法』平井正三・鵜飼奈津子・西村富士子監訳〔金剛出版, 2006年〕、『精神分析という経験』館直彦・横井公一監訳〔岩崎学術出版社, 2004年〕など。

【解説】
東中園 聡(ひがしなかぞの・さとし)
1984年、防衛医科大学校医学部卒業。1986年以降、福岡の地で精神科病院にて勤務を続けている。
日本精神分析学会認定精神療法医スーパーバイザー。
松木邦裕先生を筆頭に、佐野直哉先生、北山修先生、衣笠隆幸先生、そして新海安彦先生、小林正信先生、辻悟先生、飯田信也先生を始めとする多くの先生方から学んできた。現在、(照和会)西岡病院勤務。

共著に「統合失調症者との治療的コミュニケーションの試み」「統合失調症の精神分析におけるマネージメント」「治療の行き詰まりと、愚直に逆転移の吟味を反芻すること」「パーソナリティ障害と集団」いずれも松木邦裕編著《精神分析臨床シリーズ》〔金剛出版, 2008/2019〕、「ロゼンフェルドとの遭遇」『imago 精神分析学の現在』
〔青土社, 1992〕など、共訳には、ロゼンフェルド「精神病状態の精神病理への寄与」松木邦裕編訳『メラニー・クライン トゥデイ①』〔岩崎学術出版社, 1993〕などがある。

もくじ

[前篇 精神病世界の難問]

1章 ミルドレッドと精神病状態の特徴
臨床的特徴/精神病的混乱に陥った患者/原初の状態と精神病状態

2章 投影同一化と脱人格化
精神病性転移/投影同一化の形式/ケースを簡潔に/投影同一化の良性形式

3章 混乱状態
分裂している自己と他者/破壊性によって妨げられた償い/投影と取り入れの混乱/報復的な対象/実例/いくつかの理論

4章 超-自我
臨床観察

5章 陰性ナルシシズム
パーソナリティの組織化/臨床例

6章 境界性パーソナリティ
境界例のカテゴリー/早期のトラウマ/再び-心的外傷を負わせること

7章 その他のカテゴリー
同性愛/心気症と心身症/うつ病/薬物嗜癖/マゾヒズム/さまざまな診断

[後篇 臨床的アプローチ]

8章 古典的手法で解釈的に
ローゼンフェルトの技法の原則

9章 討論――グリーンソンとギテルソン
診断方法について/技法について

10章 逆転移というもつれた関係性
共謀することと再び心的外傷を与えること/臨床素材/イタリアのミナー

図書設計・デザイン

寺村隆史

デザインの特徴

本文は【脚註】が充実――理解を拡げる「キーワード」のほか、理解を深める「キーフレーズ」を抽出して掲載。

装丁は全体がシックな「グレー階調」だが、リッチな“から箔”押しがワンポイント・チャーム!

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