みんなのひきこもり【終了】
巣ごもりと「ひきこもり」は違うの?
[加藤隆弘]
コロナ禍による外出自粛や非常事態宣言などにより、私たちのライフスタイルは大きくかわりつつあります。在宅ワークを余儀なくされている会社員、登校できずに自宅でオンライン授業を受けざるを得ない学生さんたち…。
「おうち生活」が奨励され、「ステイホーム(Stay at Home)」が叫ばれるなか、外出しないで日常的にずっと自宅にいる生活スタイルをマスコミでは“巣ごもり”と呼ぶようです。
ひきこもり臨床に関わってきた私へ、最近よく尋ねられる質問があります。
「巣ごもりとひきこもりって何が違うんですか?」
「このままいくと、僕も(私も)ひきこもりになっちゃうんじゃないのかって不安です」
「うちの子、このままひきこもりにならないかって心配です。ちゃんと学校が始まったら行けるのかしら」
こうした不安を抱いている方が少なくないようです。
ひきこもりと巣ごもりって、どこが同じでどこが違うのでしょうか?
いま、コロナ禍により外出自粛が奨励されています。私が住んでいる福岡市では3月から学校が休校となり、子供たちは昼間から「ステイホーム」の生活を余儀なくされる状況が続いていました。たとえば、私の子供たちは2ヵ月以上、ほぼ自宅だけの生活を送り、学校のお友達とも一切直接会わない(会えない)状況に置かれていました。5月末から登校が再開となりましたが、いまだ、完全には以前の状態には戻っていません。「病的ひきこもり」に該当するかどうか、わたしたちが作った新しい定義に照らしてみましょう。
【必須項目】 物理的撤退
20分程度の自宅周辺の散歩は週に2〜3回行っていたが、それ以外の外出頻度は週一回以下(特に緊急事態宣言の時期) ⇒該当する
【必須項目】 物理的撤退の期間
2ヶ月半 ⇒3ヶ月を満たさず、「プレひきこもり(3ヶ月以上6ヶ月未満)」にはぎりぎり該当せず
【必須項目】 物理的撤退による本人あるいは周囲の苦痛
外出しないことで家庭内ではかえって密になっており、孤独感を訴えることはなかったが、同胞間での喧嘩が増加した。親としては「こうした状況が続けば、学業に大きな支障が生じるのではないか」といった不安を抱いた ⇒該当する
【補足項目】
・直接的交流:毎日家族との交流あり・家族以外との交流はほとんどなし
・間接的交流:電話・SNSを通じた交流あり
○総合評価
「病的ひきこもり」には該当しないが、「プレひきこもり」に近い状態
緊急事態宣言が解除され学校が再開され、我が子はなんとか学校に通い始めましたが、登校渋りする生徒もおられるようで、心配されている親御さんも少なくないと思われます。次回は、コロナ禍で、「病的ひきこもり」にならないためのノウハウを考えてみたいと思います。
●参考資料
・診断基準を提唱した論文(Kato et al. World Psychiatry 2020)
・PRESS RELEASE(2020/02/04)ひきこもり者を適切に支援するための新しい国際評価基準を開発
マスター
加藤隆弘(かとう・ たかひろ)
九州大学病院 精神科神経科 講師
日本精神神経学会専門医・指導医、精神保健指定医
共著『北山理論の発見』(創元社 2015年)など
●参考Web記事のURL https://www.data-max.co.jp/article/21378?rct=health