社会のストレスとこころ
パーソナリティ障害と集団ダイナミクス
著者|手塚 千惠子
¥2,420
- ISBN|978-4-909862-27-3
- 初版発行|2023年03月20日
- 造本|A5変形(方形)判並製
- ページ数|168
- 重さ|260
- 心理
- 心理療法/精神分析
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社会という「生きもの」の無意識に注目
日常のスケープゴートから、絶え間ない戦争まで
内容紹介
○私たち個人が「社会」という他者と出会って生じる“ストレス”に、こころはどのように相対し、自らを修正して、健康を維持あるいは回復させているのでしょう? 本書が描くのは、そんな無意識のダイナミクスです
○社会という普遍的な視点+パーソナリティという個別の視点、その両眼視で、コロナ情況からウクライナ戦争まで、“集団という生きもの”の無意識が浮かびあがります。なかでも、「ストレス状況へのレスポンス」のキーポイントとして、〈自己愛性障害〉というこころのあり様を、四つの臨床例に基き描出します。
著者まえがきより
○私たち個人のどこかに存在している“こころ”が、外部の他者と出会って、集団によって形成された「社会」に対峙すると、いったい、どんなことが起るのでしょうか?
○実際には一人ひとりの“こころ”が臨機応変な対応をして、問題が生じないことが圧倒的に多いでしょう。その時その人のこころは健康な状態にあるのですね。ただ、私たちはいつも健康でいたいのですが、外的そして内的事情に応じて、健康とはいえない状態になるのを避けられません。
○私たち個人と「社会」という他者集団のあいだに生じる“ストレス”に、私たちのこころはどのように相対し、みずからを修正したりして、健康を維持(あるいは回復)させているのでしょうか?――本書で皆様と考えていきたいのは、そうした無意識のダイナミクスなのです。
著者・出版社からの一言
〇この本をまとめるうちに、「子育ては現代社会の縮図だ」という思いをいっそう強くしました。本書では、大人と子どもの生きる速さが違ってきており、それが子育てをしんどく感じさせ、親子の心のすれ違いを生じさせているのではないか、と強調しました。子育てが難しい時代になっているのです。
〇科学の発展や進歩の名のもとに、人間が自然から離れようとする力が強くなっていますが、自然に留まろうとする力とのせめぎ合いが、子育てのなかでさまざまな葛藤や苦しみを生み出しているように思います。
〇社会がいまのまま進めば、大人と子どもの生きる速さの違いは、ますます大きくなるでしょう。“子どもという自然と付きあう”ことから私たちは、この先どんな生き方を選ぶのか、どんな速さで生きてゆくのか、を日々問われているように思えます。
著者紹介
手塚千惠子(てづか・ちえこ)
○1944年兵庫県生まれ。大阪市立大学家政学部児童心理学科(現・大阪公立大学生活科学部)卒業、大阪市立病院精神神経科にて心理療法・心理テストに従事。
○大阪市保健所/大阪市こころの健康センター/大阪府保健所/大阪市南部子ども相談センター/国立病院機構大阪医療センターで心理的援助に従事。
○大阪市立大学生活科学部大学院、関西福祉科学大学大学院、甲子園大学大学院、大阪医療センター附属看護学校、市立病院付属看護学校にて非常勤講師。
○現在は大阪市で“心理室森ノ宮”を開設して、精神疾患への心理療法や専門家の訓練を営む。
もくじ
●集団のダイナミクス
逃避し依存するグループ
内的空想がエネルギーになるとき
第二章 もうひとつの集団力動
こころの危機から護るために
自他いずれかにむかう攻撃性
気づけるよう 選択できるように
援助者が関わることで
●精神分析的心理療法の実際
第三章 こころのあらわれ――言葉や考えが誕生する
第四章 自己愛世界に他者が登場する
第五章 夢想が明らかにしたもの
第六章 「中断すること」によって明示されたこころ
終 章 自己障害患者にどう関わるか
自己の発達にかかわる苦しみ
新しい自分を試みるために
向いている? 向いていない?
文化にまつわる視点
自分中心から自他共生に
おしまいに
図書設計・デザイン
上野かおる
デザインの特徴
一見(写真で見ると)モノトーンで地味な印象もあるが、幾重にも「ひねり」が折り込まれた造本。
まずもって、変則判型がA5判と四六判の特性を表現している(仕上寸法のタテが四六の188mm/ヨコがA5の148mm)。
すなわち、A5判の「専門書」感と四六判の「よみもの」感をともに体現しようという狙い。
次に、波形にカットされたカバーで巻かれた、むきだしの表紙が印刷ではなく「紙そのものの色」で強い存在感を出している。
その表紙の文字は「白箔押し」でクラシカルでシックな調子、対照的に波形カバーはベルベットPP加工によって現代的でポップな肌触り。