第8回 コロナ禍がひきこもりのリスクを高める?

[加藤隆弘]


ひきこもりのきっかけはさまざまですが、人生における節目、あるいは何らかの長期的な休みがきっかけになり、《病的なひきこもり》に突入することがまれではありません。このひきこもりの初期段階といえる時期に、本人あるいは周囲の者が「いまはひきこもりの初期段階だぞ!」と自覚的になることは実は難しいのです。

卒業、転職を目指しての退職、引越、あるいは、夏休みといった長期休暇、こうしたイベントがひきこもりの引き金になります。1,2週間のゴールデンウィークによって、通学や通勤といった日常生活に戻ることが困難になる現象のことを(医学用語ではありませんが)「五月病」といいます、このゴールデンウィーク休みも、ひきこもりの引き金になりえます。

 

さて、今回のコロナ禍、いかがお過ごしでしょうか(あるいは「お過ごしだった」でしょうか)。コロナ自粛が解除され、以前の日常生活に戻っている方も多いことと思われます。ひきこもり臨床と研究を実践している立場として、私はコロナ禍により余儀なくされた外出自粛生活が、少なくとも一部の方々にとっては《病的なひきこもり》の引き金になるのではないかと懸念しています。もちろん、多くの方々は特に難なく日常に戻っていかれると思っています。しかしながら、自粛期間中に以下のようなことがあった場合には、注意が必要です。

□ 飲酒量が大幅に増えた
□ インターネットの利用時間が大幅に増えた
□ SNSの利用時間が大幅に増えた
□ ゲームの利用時間が大幅に増えた
□ 「孤独感」を強く感じる、あるいは、「孤独感」を全く感じない
□ 不眠になった、睡眠リズムが乱れた(昼夜逆転など)
□ 気分が落ち込む、憂うつになることが大幅に増えた
□ 暴飲暴食になった、体重が5 kg以上変動した
□ 自粛期間に入る直前、学校や職場でストレスを抱えていて、自粛期間になり、ホッとした、あるいは、ストレスが大幅に軽減した
□ 自粛期間に入る前から、学校や職場から逃げたいという思いがあった
□ 自粛期間に入る前から、生きがいをもっていなかった

いかがでしたか? 何項目、当てはまりましたか? 半分以上当てはまる場合には、《病的なひきこもり》のリスクが高いかもしれません(現時点では一切エビデンスはありませんが…)。

こうしたリスクに対して、具体的な対処法を身に付けることで《病的なひきこもり》になることを予防できるはずです。コロナ禍において病的なひきこもり状態に陥らないための対処法をみなさんと考えていきましょう。


加藤隆弘加藤隆弘(かとう・ たかひろ)

九州大学病院 精神科神経科 講師
日本精神神経学会専門医・指導医、精神保健指定医
共著『北山理論の発見』(創元社 2015年)など